私には、以前から不思議に思っていたことがあります。
登山や釣りなど、長時間の活動を終えた帰り道。高速道路では強い眠気に襲われるのに、下道ではそこまで眠くならないのです。
高速では、なぜかSA・PAを通過した直後に眠気が出て、次の休憩場所まで難儀することが多くありました。一方、下道では時間がかかり、運転の疲労感も大きくなりますが、何故だか酷い眠気で危ない思いをした経験がありません。
私には、楽な高速より、疲れるはずの下道の方が強い眠気に襲われにくい。
この違い、経験ではわかっているのですが、納得のいく説明が見いだせず、ずっとモヤモヤのまま。
その長年の疑問、自動運転に関する研究から得られた「受動的な疲労」という見方を知って、遂に納得、スッキリ腑に落ちました。
疲れるかどうか以外にも、注意を向け続けやすいかどうか。私の帰り道の選択にも、その違いが関わっていたのではないかと考えています。
負荷が多い疲労と、少なすぎる疲労
運転研究には、負荷の違いから疲労を分けて考える見方があります。
- 能動的な疲労(active fatigue):高い操作負荷などが続くことで生じる疲労。
- 受動的な疲労(passive fatigue):負荷が低く、監視が中心になる状況で生じる疲労。
疲れというと、体を動かしたり、難しいことを考えたりした結果を思い浮かべます。でも、やることが少ない状態で注意を保ち続けるのも、別の難しさを持っているのです。
これは、道路の種類ではなく、運転中の負荷による分類です。「下道なら能動的、高速なら受動的」と決まるわけではありません。
また、受動的な疲労は、イコール睡眠不足という意味でもありません。負荷の少なさと、十分に眠れているかは、別の問題として捉える必要があります。
シミュレータの研究では、風による外乱で操作負荷を高くした運転と、完全に自動化して操作負荷を低くした運転を比べています。低負荷の条件では運転課題への関与が弱まり、その後の緊急事象へのブレーキや操舵が遅れる傾向がありました。[1]
この実験では、操作が減って楽になることと、必要なときに素早く対応できることは、同じではなかったのです。
操作の負担が軽いことと、注意を保ちやすいことは別。
私がこの言葉を知ったのは、自動運転についてAIチャットで雑談していたときでした。自動運転の話が、昔から引っかかっていた帰り道の疑問につながるとは思いませんでした。
高速での睡魔と、説明がつながった

高速道路の運転(イメージ図)
高速道路は、一定の速度で走りやすく、似た景色が続く区間もあります。下道に比べ、判断や操作が少なくなる場面があります。
そうした状況が、私にとっては運転の楽さであると同時に、強い眠気に困る状況でもありました。
道路景観の単調さを調べた模擬運転の研究でも、景観が単調な条件では、ハンドルを大きく動かす操作がより頻繁に見られています。研究では、これを疲労や注意の低下を示す指標として扱っています。[2]
先ほどの完全自動化を使った実験も、この景観の研究も、人が高速と下道を走り比べたものではありません。私の眠気の原因を確かめたものでもありませんが、自分の経験を考える手がかりになりました。
下道では、交差点や信号、歩行者など、確認する対象が次々に変わります。その場に応じた判断や操作も必要です。高速より疲れると感じるのは、こうした運転の忙しさもあるのでしょう。
私には、その判断や操作が、注意を向け続ける支えになっていたのではないか。「受動的な疲労」を知って、そう考えるようになりました。
「どうしてわざわざ疲れる道を選ぶのか」という疑問には、注意を保つという軸を加えることで、「私には、程よく判断や操作のある道が合っていた」と答えられるようになりました。
私が下道で感じていたのは、注意を自然に向け続けられる程度の刺激と緊張でした。運転に手応えがあり、目の前の状況へ意識が向いている。その実感が、下道を選ぶ理由だったのだと思います。
難しい道を走ったり、限界まで気を張ったりすればよい、ということではありません。負荷が大きすぎれば、さらなる疲労につながります。求めたいのは、無理なく状況に注意を向けられる運転です。
「下道の方が疲れる」という実感と、「下道では酷い眠気に襲われない」という経験。何となく食い違って思えた二つが、この見方でつながるようになったのです。
こうした下道の刺激で、眠気や疲労の蓄積を解消できるとは考えていません。私が下道を選ぶ場合も、後述する休憩や睡眠の確保と一緒に考える必要があります。

下道の走行(イメージ図)
私が下道を選ぶ、もう一つの理由
私が下道を選ぶもう一つの理由は、高速より低い速度で走れる区間があることです。速度を抑えることは、万一衝突したときの被害を小さくするうえでも大切です。
埼玉県警の「速度管理指針」でも、速度が高まるほど、人と車の事故での致死率が高まることを示しています。[3]
WHOの交通安全資料も、速度の増大が、事故の起こりやすさと被害の大きさに関わると説明しています。[4]
これも、私が下道を選ぶ理由の一つで、あえて低い速度で走れることに意味があると考えています。
ただし、これらの資料は、高速と下道の安全性を比べたものではありません。下道には交差点や歩行者など、高速とは異なるリスクもあります。低い速度で走れる利点と、経路全体を安全に走れるかは、分けて考えたいところです。
実際に下道で帰るには
下道が自分に合っていると感じても、長時間の活動後に走ることには変わりありません。ここでは、実際に下道で帰るときに気をつけたいことと、私が帰路を選ぶ際の目安をまとめます。
眠くないはあてにならない
単調な昼間の実車運転を調べた研究では、本人の覚醒感が改善した時期にも、反応課題や脳波などの指標では覚醒状態の低下が続いていました。自分では目が覚めてきたと感じても、実際の反応は回復していなかったのです。[5]
私の「下道では強い眠気に困らなかった」という経験も、休憩なしで走れる保証にはなりません。眠気の有無だけを頼りにせず、時間を見て定期的に休むことが大切です。
休憩、眠くなったときは
帰りに走り出す時点で眠いなら、まず出発を遅らせて休みます。走行中に眠くなったときも、道路の種類に関わらず、安全に駐車できる場所に停車して休み、必要なら仮眠を取ります。
NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)は、安全な場所での約20分の仮眠とカフェインの利用を、一時的な眠気対策として案内しています。[6] 休んでも眠気や強い疲労が残るなら、運転を再開せず、現地や途中で一泊する選択も考えたいところです。
下道なら、コンビニや道の駅など、SA・PAに限らず休む場所を選べます。道の駅では、運転途中の疲労回復のために車内で仮眠を取ることが認められています。また、北海道開発局の案内には、長距離運転中の休憩にも利用できるチェーン着脱場の例があります。[7][8]
ルートによっては、こうした休憩場所の選択肢が多いことも下道のメリットです。コンビニの駐車場は店の利用ルールに従い、チェーン着脱場は休憩に使えるかを確認して、着脱作業の妨げにならないように利用します。
帰りのルートは計画時に決めておく
NHTSAは、眠気による事故を防ぐ基本として、日頃から十分な睡眠を取り、長距離運転の前にもよく眠ることを勧めています。[6]
下道は帰宅までの時間が延びやすいので、活動時間と休憩時間も含めて、十分な睡眠を削らずに済む計画を立てておくとよいです。
行き先や出発時間を決める段階で、帰路のルートと所要時間、途中で休めそうな場所をいくつかピックアップしておくと、多少のイレギュラーが発生しても対応が楽になります。
私の経験では、帰路を選ぶときに、次のような条件が目安になります。
- 郊外のバイパス・広域農道:道幅や曲がり具合も見て、運転の負担が大きすぎない区間を選ぶ。
- コンビニ・道の駅などが多い:途中で休める場所を、いくつか選べるようにしておく。
- 高速道路から離れすぎない:休憩後の体調や残り時間に合わせて、高速へ切り替える余地も残しておく。
今はスマホで道路の混雑状況を確認できるので、出発前や休憩中に調べて、状況に合わせて下道と高速を併用することもできます。
翌日が仕事の場合など、急ぎがちになることもあると思いますが、休憩時間まで削ってしまわないようにしたいところです。状況に合わせてルートを選択できる余裕を持つためにも、事前調査はおすすめです。

ルート計画の様子(イメージ図)
地図を眺めるだけでも面白い
「受動的な疲労」という研究の見方に自分の経験を重ねて、運転の楽さと注意の保ちやすさを分けて考えられるようになりました。疲れる下道を選んできた理由が、自分の中で腑に落ちたのです。
万人向けのノウハウではないと思いますし、高速の方が無理なく走れる人もいるでしょう。私には、遠征時のルート選択に幅があることで、気持ちに余裕が生まれます。
どちらの道でも眠気が出たら休むことを前提に、その日の体調に合う帰り方を選びたいと思います。
次の遠征は、地図を眺めてルートや休憩場所の確認をしてみるのはいかがでしょうか?
面白い発見があるかもしれません。
参考文献・資料
参考文献一覧(クリックで開きます)
Saxby DJ, et al. Active and passive fatigue in simulated driving: discriminating styles of workload regulation and their safety impacts. Journal of Experimental Psychology: Applied. 2013.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24041288/Thiffault P, Bergeron J. Monotony of road environment and driver fatigue: a simulator study. Accident Analysis & Prevention. 2003.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12643955/埼玉県警察. 埼玉県警察速度管理指針. PDFの発行日記載なし。掲載ページは2026年9月1日更新、2026年10月7日確認。
https://www.police.pref.saitama.lg.jp/documents/754/r8sokudosisinn.pdfWorld Health Organization. Road traffic injuries. 2026年7月20日更新。
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/road-traffic-injuriesSchmidt EA, et al. Drivers’ misjudgement of vigilance state during prolonged monotonous daytime driving. Accident Analysis & Prevention. 2009.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19664450/U.S. National Highway Traffic Safety Administration. Drowsy Driving. 公開年不明、2026年10月7日確認。
https://www.nhtsa.gov/risky-driving/drowsy-driving国土交通省. 道の相談室:休憩施設「道の駅」―「道の駅」駐車場での車中泊は可能ですか? 公開年不明、2026年10月7日確認。
https://www.mlit.go.jp/road/soudan/soudan_03_04.html国土交通省北海道開発局 札幌開発建設部. チェーン着脱場. 公開年不明、2026年10月7日確認。
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/douro_keikaku/kluhh4000000cb37.html
