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【体験談】夏の尾瀬で汗冷え。登山後の車内が“一番危険”だった理由

夏の尾瀬で経験した、下山後の意外な『汗冷え』の恐怖。暖かいはずの車内でなぜ低体温症寸前になったのか?メリノウールの落とし穴や、安静時の発熱量低下のメカニズムを実体験から解説。登山後の安全な帰宅のための対策を紹介します。

概要

2024年の夏、雨の尾瀬で下山したあと車へ戻り、濡れたベースレイヤーのまま休憩したことで体がどんどん冷えてしまう経験をしました。

登山では「汗冷え=山の中で起きるもの」と思われがちですが、実際には下山後の停滞時にも起きやすい現象です。1

この記事ではその体験をもとに、下山後の車内など停滞時に起きる汗冷えの原因と対策を整理します。

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尾瀬沼から下山後の車内、寒くてたまらない

尾瀬沼 (筆者撮影)

尾瀬沼 (筆者撮影)

2024年7月上旬、尾瀬沼へ行ったときのことです。

予報より早く雨が降り始め、大清水へ下山する頃には本降りになっていました。

ゴアテックスのレインジャケットを着ていましたが、行動中の発汗によりメリノウールのベースレイヤーはしっかり濡れている状態でした。

駐車場に戻ったあと、まず車外で

  • 濡れたレインウェアを拭く
  • ザックや衣類の水を絞る

といった後片付けをします。

そのあと車内に戻り、あらかじめ用意していた

  • ペットボトルのお茶(常温)
  • 菓子パン

で一息つきました。

ところがこのとき、替えのシャツを持っていなかったため濡れたベースレイヤーのままだったのです。

そのままコンビニへ向かって車を走らせたのですが、

  • 暖房を全開にしても体がなかなか温まらない
  • じわじわと冷えが続く

という状態になりました。2

そこで途中の『道の駅尾瀬かたしな』に立ち寄り、自販機でホット缶コーヒーを飲んで休憩しました。

しばらくすると体の内部から温まる感じが出てきて、車内も暖まってきたので仮眠を取ることにしました。

目が覚めた頃には寒気は収まり、体調も回復。
そのまま帰路につくことができました。

AI(gemini)による下山後の意外な『汗冷え』イメージ

AI(gemini)による下山後の意外な『汗冷え』イメージ


原因

寒気が収まらなくなった原因を整理してみたいと思います。

「汗冷え」のメカニズム

人間の体温調節の大きな仕組みの一つが蒸発冷却です。3

汗は蒸発するときに体から熱を奪います。
その量はおよそ

汗1Lあたり 約580 kcal

とされ、かなり大きな熱量です。3

一方、人体の発熱量は活動量によって大きく変わります。4

状態発熱量
安静約80W(69 kcal/h)
登山中約500W(441 kcal/h)〜700W(588 kcal/h)

※70㎏、安静は1 MET相当、登山中は6–8 METとして計算

登山中は発熱量が多いため多少濡れていても問題になりにくいのですが、
行動を止めると一気に発熱量が下がります。4

このとき

汗による冷却 > 体の発熱

となると、いわゆる「汗冷え」が起きます。5

汗冷えの誤解

私はそれまで、汗冷えは行動中だけ注意すればよいと思っていました。

強い風や雨など、外的な要因の体温低下が危険なのだという認識でした。

メリノウールに頼り過ぎた

メリノは消臭効果があるため、マイカーでの日帰り登山なら替えのシャツは不要だろうと高をくくっていました。

また速乾性についても誤解していました。
メリノウールは調湿性能に優れる一方、速乾性能は化繊の方が高いとされています。

つまり、思っていたよりも乾きにくかったのです。

行動中以外にも汗冷えは起こる

振り返ると、低体温症の手前の状態だった可能性があります。6

下山中は歩いているため発熱量が多く、濡れたウェアでもそれほど寒さは感じません。
しかし車に戻ると行動が止まり、体の発熱量が一気に下がります。4

そこに濡れたベースレイヤーが加わることで、体の熱がどんどん奪われてしまったのだと思います。5

運転中ということもあり

  • 風雨にさらされることがない
  • 暖房が使える

という環境だったため大事には至りませんでした。

ただ、「安全で暖かいはずの車内」であっても
安静(停滞)による発熱低下と汗冷えが重なると、意外なほど体は冷えるというヒヤリハット体験でした。1

つまり重要なのは、汗冷えは

  • 外気温
  • 雨や風

といった環境要因だけでなく、行動 → 停滞という発熱量の変化でも起きるという点です。5

そしてこの状態が長く続くと、低体温症につながる可能性があります。6

大江湿原とニッコウキスゲ (筆者撮影)

大江湿原とニッコウキスゲ (筆者撮影)


下山後の車内でできる汗冷え対策

ここからは、私の反省も含めて下山後の停滞時にできる対策を整理してみます。

1. 着替え、汗による蒸発冷却を止める

もっとも効果的なのは

濡れた衣類を乾いたものに替えること

です。7

  • タオルで体を拭く
  • ベースレイヤーを着替える

これだけでも蒸発による熱損失をかなり減らせます。7

「下山後だから大丈夫」と思いがちですが、
車に戻ったタイミングこそ着替えのベストタイミングです。1


2. ドライレイヤー、体を冷やさない

高所であれば夏であってもドライレイヤーは有効です。

濡れたウェアを着続ける状況でも、汗戻りを防いで体幹を冷やさないことに加え、空気層による保温効果も期待できます。

この反省をもとに夏用のドライレイヤーとして「オンヨネ ブレステックPP(amazon)」を2025年から使っています。
網タイプに比べてコンパクトで嵩張らないため、小型ザックとの相性が良く夏用にとても重宝しています。
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また、血流の多い部分を温めるのも有効です。

  • 太もも周辺
  • 手足など末端

こうした部分を温めると、冷え防止になり体感温度が上がりやすくなります。


3. 温かい飲み物・補給食で体を内側から温める、熱収支をプラスに

体温維持には内部からの熱源も重要です。

下山後は疲労もありエネルギーが不足していることが多いので

  • 温かい飲み物
  • 糖分のある食べ物

を摂ると回復が早くなります。8

私の場合も、缶コーヒーと軽食で体が温まりやすくなった感覚がありました。

ただし、温かい飲み物が直接与える熱量はそれほど大きくなく、濡れた衣服を着替える代わりにはなりません9

山行後のドライブでも保温ボトル(amazon)にお湯を用意しておけば安心ですね。
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まとめ

汗冷えは「山の中のトラブル」と思われがちですが、実際には

下山後の停滞時にも起こりやすい現象です。

とくに次のような条件では注意したいところです。

  • 雨の日の行動
  • 長時間の登山
  • ベースレイヤーが濡れたままの状態

車に戻ると安心してしまいがちですが、
行動停止による発熱低下+濡れたウェアという組み合わせは意外と体を冷やします。

私自身の反省としては、

「着替えを用意して、下山したらまず着替える」

これを習慣にするのが一番確実な対策だと感じました。

また、安全運転のためにも

「温かい飲み物を用意し、体調に注意しながら運転する」

ということも大切だと思います。

しかし今更ですが、7月なのに自販機でホットドリンクが売っていたのは記憶違いの可能性があります。(夏でも夜は涼しい『道の駅尾瀬かたしな』なら売っていても不思議はないですが) 何しろ2年前のことなので。

ただ、道の駅で飲み物をとったあとに体調が回復したのは確かです。
車内の暖房が効いてきたところに飲み物の糖分やカフェインが疲れた体に働きかけ発熱も促したというのが本当のところかもしれません。

夏は夕立が多くアウトドアで雨に濡れる事も増えます。

同じように下山後に長距離ドライブをする機会が多い人は、 ぜひ一度、装備や行動を見直してみてください。

尾瀬VCから燧ケ岳 (筆者撮影)

尾瀬VCから燧ケ岳 (筆者撮影)

Youtube動画

本稿の内容をAI(NotebookLM)にて動画にして貰いました。


参考文献

参考文献一覧(クリックで開きます)
  1. Wilderness Medical Society. Wilderness Medical Society Clinical Practice Guidelines for the Out-of-Hospital Evaluation and Treatment of Accidental Hypothermia. 2019. https://doi.org/10.1016/j.wem.2019.10.002
  2. NIST Chemistry WebBook - Water thermophysical data. National Institute of Standards and Technology. Year unknown. https://webbook.nist.gov/cgi/cbook.cgi?ID=C7732185
  3. American College of Sports Medicine. ACSM Position Stand: Exercise and Fluid Replacement. 2007. https://doi.org/10.1249/mss.0b013e31802ca597
  4. Ainsworth BE, et al. 2011 Compendium of Physical Activities. 2011. https://doi.org/10.1249/MSS.0b013e31821ece12
  5. American College of Sports Medicine. ACSM Position Stand: Exertional Heat Illness during Training and Competition. 2007. https://doi.org/10.1249/MSS.0b013e31802fa199

更新履歴

  • 2026/06/15 脚注(文献リンク)・参考文献一覧の追加。発熱量を訂正。

  1. 下山後の車内や休憩所でも、濡れた衣服のまま安静にすると汗冷えは起こる, refs=[1,4] ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. 運動停止後に濡れた衣服を着続けると、代謝熱産生の低下と蒸発・伝導による熱損失が重なり汗冷えリスクが高まる, refs=[1,4] ↩︎

  3. 汗が皮膚上で蒸発すると、水1Lあたり約2.4MJ、約580kcalの熱を体表から奪う, refs=[2,3] ↩︎ ↩︎

  4. 登山や荷物を背負った歩行では、安静時の数倍の代謝熱が発生する, refs=[4] ↩︎ ↩︎ ↩︎

  5. 深部体温は代謝熱産生と環境・衣服・発汗による熱放散の収支で決まる, refs=[5] ↩︎ ↩︎ ↩︎

  6. 軽度低体温症では、震え、寒気、動作のぎこちなさ、判断力低下が初期症状として現れる, refs=[1] ↩︎ ↩︎

  7. 濡れた衣服を脱いで体を拭き、乾いた衣服で断熱すると低体温リスクは下がる, refs=[1] ↩︎ ↩︎

  8. 意識がはっきりして飲み込める寒冷ストレス者には、温かく糖質を含む飲料の摂取が補助的な再加温策になる, refs=[1] ↩︎

  9. 温かい飲料が体に直接与える熱量は、運動時の代謝熱に比べて小さい, refs=[2,1] ↩︎

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